GNU のウェブページに GIF ファイルが一つも無い理由

 [思慮深いグニューの画像] [ 英語 | フランス語 | 日本語 | 韓国語 | ロシア語 ]

GNU のウェブサイトでは、GIF 画像が一枚も使われていません。GIF ファイルを 作成するのに使われる LZW 圧縮アルゴリズムが、Unisys と IBM の所有する 特許の対象となっているからです。これらの特許のために、フリーソフトウェア が適切な GIF を生成することは不可能となっています。 また、この特許は compress プログラムにも適用されますから、GNU は compress やそのフォーマットを使いません。

Unisys も IBM もこの特許を申請したのは 1983 年ですので、2003 年には 失効するでしょう。それまでは、GIF ファイルを作るフリーのプログラムを 発表する人は皆、訴えられると思って間違いないでしょう。 裁判に持ち込んでも、特許保有者たちを負かすに足る根拠はまず無いと思われます。

私たちがそのようなプログラムを発表したとしても、Unisys や IBM は (世間体ということもあるので) FSF のような慈善団体を訴えない方 が賢明であると考えるかもしれません。しかし、彼らは私たちの代わりにその プログラムのユーザを訴えることができるでしょう。そういったユーザの中には GNU ソフトウェアを再配布する企業も含まれます。私たちには、このような 状況を引き起こしてしまうことが責任ある態度だとは到底思えないのです。

多くの人々は、 Unisys が GIF 形式のファイルを作るフリーソフトウェアを 配布する許可を与えていると思っています。不幸にもそれは Unisys が現実に 行ったことではありません。以下に、1995 年この問題について Unisys が実際に 言及した文章を示します。

Unisys does not require licensing, or fees to be paid, for non-commercial, non-profit GIF-based applications, including those for use on the on-line services. Concerning developers of software for the Internet network, the same principle applies. Unisys will not pursue previous inadvertent infringement by developers producing versions of software products for the Internet prior to 1995. The company does not require licensing, or fees to be paid for non-commercial, non-profit offerings on the Internet, including "Freeware".

(訳: Unisys は、非商用かつ非営利目的の GIF 技術を基にしたアプリケーション については許可や特許使用料の支払いを要求しません。ここでいう アプリケーションにはオンラインサービス上で使われるソフトウェアも含みます。 インターネット・ネットワーク向けソフトウェアの開発者に対しても、 同じ原則が適用されます。Unisys は 1995 年より前にインターネット向け ソフトウェア製品の特定バージョンを開発した開発者たちが、以前不注意から 犯した特許侵害を追及することはしません。当社は、 インターネット上で非商用、非営利に提供されているものには 許可や特許使用料の支払いを求めず、これにはいわゆる「フリーウェア」 も含まれます。)

不幸にも、これは フリーソフトウェアを許可するものでは なく、せいぜい GNU のようなフリーなオペレーティングシステムでは 使えない 疑似フリー ソフトウェア(18k キャラクタ)を許可しているに過ぎません。 また、この文章は、LZW 技術を他の目的、例えばファイルの圧縮に 利用することは全く認めていないのです。 このため、私たちは compress の代用品として GNU zip を開発しなければ なりませんでした。

フリーソフトウェアの 商用配布は非常に重要であり、私たちとしても GNU システムを全体として商業的に再配布してもらいたいのです。 よって、Unisys が示した条件の下では、私たちは GIF を生成するような プログラムを GNU に加えることは出来ません。

フリーソフトウェア財団は 非商業的な非営利団体ですから、私たちが CD-ROM を 販売したことから得る収入は厳密には「利益」に相当しません。 ですから、おそらく私たちが GIF プログラムを CD-ROM に収録しても Unisys の与えた許可の範囲内でやっていることだと主張できる のではないかと思いますが、できないかもしれません。 いずれにしろ、私たちは GNU の他の再配布者は GIF プログラムを 自分たちの製品に含めることが出来ないのを知っていますから、 こんなことを主張できたからといって大して助けにはならないのです。

Unisys が上記の声明を発表してまもなく、ネット社会の大半は Unisys が GIF を生成するフリーのソフトウェアに許可を与えている という誤解を再確認していたころ、私たちは Unisys の法務部に これらの問題について Unisys の立場をはっきりさせてくれるよう お願いする手紙を送りました。しかし何の返事ももらえませんでした。

たとえ Unisys が本当に GIF を生成するフリーソフトウェアに 許可を与えたとしても、私たちは依然 IBM のパテントと 対決しなければなりません。IBM の特許も Unisys の特許も 同じ「発明」、すなわち LZW 圧縮アルゴリズムを保護しているのです。 (これは無能と裁定の間抜けさ加減で名高いアメリカ合衆国 特許商標監理局の失態を反映していると見做してよいでしょう。)

GIF の展開は話が別です。Unisys と IBM の特許は LZW フォーマットを展開するだけで圧縮はできないプログラムには 適用されないように書かれています。そこで私たちは GIF ファイルを表示する機能を GNU ソフトウェアに組み込めますし、 今後もそうできるでしょう。

そこで、もしそうしたければ私たちは GIF ファイルを私たちのウェブサイト に含めることは依然可能です。他の多くの方々は 私たちのために喜んで GIF ファイルを作ってくれるでしょうし、 GIF ファイルが私たちのサーバ上にあるということで訴えられることは ありません。

しかし私たちが、人びとが適切に GIF ファイルを生成することを可能とする ソフトウェアを配布できない以上、他の人びとにそのようなソフトウェアを 私たちのために使わせるべきではないと思うのです。加えて、もし私たちが GIF ファイルを生成するソフトウェアを GNU において提供できないのなら、 私たちは代替策を推奨するべきでしょうし、私たち自身は自ら推奨する代替品を 使うべきです。

1999 年、Unisys は彼らの特許問題について以下のように述べました。

Unisys has frequently been asked whether a Unisys license is required in order to use LZW software obtained by downloading from the Internet or from other sources. The answer is simple. In all cases, a written license agreement or statement signed by an authorized Unisys representative is required from Unisys for all use, sale or distribution of any software (including so-called "freeware") and/or hardware providing LZW conversion capability (for example, downloaded software)

(訳: Unisys はこれまで、インターネットからのダウンロードや 他の配布元から入手された LZW ソフトウェアを使うために、Unisys の 許可が必要かどうか頻繁に質問を受けてきました。答えは簡単です。 いかなる場合でも、ソフトウェア(いわゆる「フリーウェア」含む)、あるいは (例えばダウンロードされたソフトウェアなどの) LZW 変換機能を持つハードウェアのあらゆる使用、販売ないし配布には、 権限のある Unisys の代表者によって署名された文書による ライセンス契約あるいは声明を Unisys から得ることが必要となります。)

この声明によって、Unisys は 1995 年の、彼らのパテントの 一部を公衆に与えるという声明を撤回しようとしています。 このような動きが適法であるかは疑問ですが。

より重要なことは、LZW の特許、そして一般にソフトウェア特許が 概してプログラマの自由を侵害するものであり、すべてのプログラマは 団結してソフトウェア特許に反対する必要があるということなのです。

ですからたとえ私たちが、フリーソフトウェアのコミュニティが GIF を生成することを可能とする解決法を見つけたとしても、それは 問題全体を解決するものではなく、本当の意味で解決にはなりません。 別のフォーマットに移行し、GIF を今後いっさい使わないことこそが 真の解決なのです。

そこで、私たちは GIF を使いません。また、皆さんもお使いにならないことを 望んでいます。

GIF フォーマットを読めるプログラムで扱えるという点で、GIF と同様に 使える無圧縮の画像を作ることは可能です。このような画像を作るために、 特許を侵害することはありません。こういった疑似 GIF はいくつかの目的には 有用です。

また、特許的な問題が無いランレングス符号化を用いて GIF を作ることも 可能ですが、GIF によって通常達成されるような圧縮率は 期待できません。

私たちは、自分たちのウェブサイトでは上で述べたような疑似 GIF は 使わないことにしました。それらはコミュニティが直面している問題を 満足行くようなかたちで解決するものではないからです。 たしかにそれらはきちんとした GIF ファイルですが、非常にファイルサイズが 大きくなってしまいます。ウェブに必要なのは 特許の問題が無い圧縮付きフォーマットであって、巨大な疑似 GIF では ありません。

PNG フォーマット は 特許の問題が無い圧縮付きフォーマットです。私たちはこれが 広くサポートされるよう望んでおり、十分に広まった暁にはこれを 使うつもりです。私たちは、このサーバにある画像の PNG バージョンを用意しています。

GIF の特許問題についてより詳しい情報は、 プログラミングの 自由擁護同盟の GIF に関するページをご覧下さい。このページを お読みになればソフトウェア特許の問題全般についても理解を深めて頂けると 思います。

ブラウザによる PNG サポート状況ページは PNG フォーマットを 扱えるブラウザを列挙して、それらがどれだけ良く PNG をサポートしているか 評価しています。

Unisys の特許を回避するため、 GIF ファイルを読み、圧縮されていない GIF を書くことのみ可能としてある libungif というライブラリがあります。

http://burnallgifs.org は、あなたのウェブサイトで GIF ファイルを使わないようお勧めする ために用意されたウェブサイトです。


その他の読みもの


GNU のホームページに戻る。

FSF および GNU に関するお問い合わせ、ご質問は gnu@gnu.orgまでどうぞ。 FSF と連絡を取るには他の手段 もあります。

これらのウェブページについてのご意見は webmasters@www.gnu.org まで、他のご質問は gnu@gnu.orgまでお送りください。

Copyright (C) 1997, 1998, 1999 Free Software Foundation, Inc., 59 Temple Place - Suite 330, Boston, MA 02111, USA

本文に一切変更を加えず、この著作権表示を残す限り、 この文章全体のいかなる媒体における複製および配布も許可する。

翻訳は 八田真行 <mhatta@gnu.org> が行いました。

Updated: 3 Jan 2001 mhatta